『長秋記』大治二年十一月四日条 語釈

語釈 特記無ければ出典は全て『角川古語大辞典』。
・案:つくえ。物を載せる台
・襪:したぐつ。沓の内側にはき、足を覆うもの。今の足袋の股のないものに似る。
・坤:南西。
・寳幢:ほうどう宝珠で飾った華麗な法幢。また、法幢の美称。
・上首:じょうしゅ。ある一段の中で上位、または最上位の者。
・纐纈:漢語。染色法の一。絞り染め。「いたじめ」の絞り。模様を彫った薄板二枚にはさんで染める。「かうけつ」とも。
・鐃鉢:にょうはつ。仏家・寺院で用いる二種の打楽器、鐃と。つねに組み合わせて用いられたところから併称される。のちには、を特にさしていう。
・尊勝陀羅尼:陀羅尼の一。帝釈天が、善住天子の七度畜生道に落ちるべき業因を持つのを哀れみ、祇園精舎に詣でて仏に救済を乞うたので、仏がこの陀羅尼を説いたという(仏頂尊勝陀羅尼経)。受けなければならない鬼神などの害悪を免れる効験を持ち、これを唱えれば、悪を清め、長寿快楽を保ち、極楽往生ができるとして、盛んに読誦された。八十七句より成り、光明真言・大日如来五字真言(阿毘羅吽欠)と一具とされる。
・東塔:三昧堂の東隣にあり、壇上伽藍の東端にあたる。大治二年(一一二七)白河法皇の御願として、醍醐寺三宝さんぽう院(現京都市伏見区)の勝覚が創建した。「長秋記」によれば大治二年一一月四日、白河・鳥羽両上皇が高野山に参詣し、「渡御東御塔(中略)、件御塔、長吏権僧正、本院御祈所被造立也、九輪鉄以尊勝不動尊降三世安置其中」とあり、両院そろって臨幸した。「金剛峯寺巡礼日記」ほかによれば、大治二年一一月、法界定印の上に鈴をのせた白河法皇等身の金色尊勝仏と不動・降三世を安置する高さ七丈、三間四面の塔とあり、勝覚を導師に検校良禅を呪願とし、二〇口を西塔、一〇口を東塔供養の色衆として落慶供養が執り行われた。(『日本歴史地名体系』)
・九輪:仏語。五重塔などの頂上の、露盤の上の請花うけばな水煙すいえんとの間に位置する九つの輪。空輪、相輪ともいう。原型は古代インドに求められる。
・降三世明王:仏語。五大明王、または八大明王の一つ。東方に配される。阿閦如来あしゅくにょらいの化身。貪瞋痴とんじんちの三毒と煩悩、所知の二つの障りを降伏ごうぶくし断ずるもの。その形像には、八臂像、四臂像、二臂像があるが、多くは八臂像で、これに三面と四面とがある。足下に大自在天とその妃である烏摩を踏みつけ、剣やしょを手に持つ。功能としては、調伏、勝軍、除病、敬愛などがあげられている。降三世。
・下輿:さげごし。ながえを手で腰のあたりに持ち上げて運ぶ輿。手輿たごし。
・持金剛衆:法会において衲衣のういを着、金剛杵こんごうしょを持ち大阿闍梨だいあじゃりに随う役僧。衲衆のうしゅ
・右遶:うにょう。仏語。敬礼法の一つで、尊者の傍を右回りに回ること。転じて、仏像を安置した須彌壇や堂塔の周囲を回る作法をもいう。三遍回ることを右繞三匝さんぞうという。
・行道:仏語。僧尼が行列して経を読みながら仏像や仏殿の周囲をめぐること。また、その儀式。
・階高:建築物の階の高さ。床面からすぐ上の階の床の上面までの高さ。
・屈請:丁重に人を招くこと。特に、法会などのために僧侶などを招くこと。
【人名】
・勝覚:平安時代の真言宗の僧。三宝院権僧正ともいう。東寺長者、広隆寺別当。康平元年(一〇五八)生まれる。左大臣源俊房の子。母は陸奥守藤原朝元の女。醍醐寺座主定賢の弟子。義範・範俊の灌頂の資。応徳三年(一〇八六)六月、三十歳で醍醐寺座主となる。永長元年(一〇九六)八月、白河上皇落飾の戒師を勤め剃手の法眼と称される。長治元年(一一〇四)東大寺別当。永久三年(一一一五)醍醐寺三宝院を創建し清滝宮を醍醐寺の鎮守とする。天治元年(一一二四)東寺長者、同二年兼法務、寺務。同年東大寺別当復任。大治二年(一一二七)白河・鳥羽両上皇の高野御幸に供奉し大塔慶讃導師を勤める。待賢門院御座御祈の賞として天治二年権僧正となる。祈雨法などの効験で知られる。大治四年四月一日没。七二歳。(『国史』)
・藤原家成:嘉承二年生まれ。藤原家保の3男。母は藤原隆宗の娘。讃岐、播磨などの国守を歴任。保延三年(一一三七)参議、のち正二位、中納言。中御門中納言とよばれる。鳥羽院政下で従妹の美福門院と手をむすび、「院第一の寵人」といわれるほどの権勢をふるった。藤原顕輔の甥にあたり、歌道の六条家をささえたひとり。仁平四年五月二九日死去。四八歳。
・巨勢金丘(岡):平安前期の画家。巨勢派の祖。神泉苑の監で、従五位下采女正になったという。元慶四年(八八〇)、宮中に先聖先師九哲像の壁画を描き、また、藤原基経の五十賀の屏風を描くなど、当時の画壇の第一人者として活躍。唐絵を日本化し「新様」と呼ばれる新しい様式をうみだしたが、その作品は伝わらない。生没年未詳。(『日国』)

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です